睡眠と覚醒を含め、1日の間に起こる私たちのすべての細胞と組織の変動には一定の規則性があります。これを「生体リズム」といいます。血液の成分や脳内物質、ホルモンの分泌なども、生体リズムに従って変動しています。不眠や睡眠障害は、この生体リズムの乱れが原因している可能性もあり、最も効果的な改善策は、朝日を浴びることです。
不眠に苦しむ患者さんはたくさんいますが、眠れない、つらいという不安で頭がいっぱいで、具体的に、この1週間、毎夜、何時から何時まで眠っていたか、昼寝や通勤電車でのうたた寝や、土日の寝だめなどで計何時間眠ったかと聞いて、答えられる人は少ないものです。人は、自分の睡眠について客観的には把握できていないことが多いのです。
仕事が忙しかったり、悩みがあったりすると、交感神経は緊張しがちになります。交感神経が優位な状態が続くと、体がこれはよくないと察知して、急に副交感神経を働かせることがあります。これを副交感神経反射といいます。この反射の結果、交感神経優位のときは収縮していた血管が拡張して、急に血行がよくなり、顔のほてりや耳鳴り、鼻づまり、頭痛、月経痛、腹痛や下痢などを引き起こしたりします。こうした症状が出ると、たいていの人はその症状を抑える薬を飲みます。ところが、症状を抑える薬には、血流を抑制する作用のあるものが多く、また、せっかく体がバランスをとろうとして副交感神経を働かせたのを、再び止めてしまうことになるのです。しかも原因になった交感神経の緊張自体は改善されていませんから、薬の効きめが切れると、再び症状が悪化してしまいます。
自律神経失調症を改善するには、交感神経を優位にさせすぎる原因をとり除くのがいちばんですが、急に生活を変えることはむずかしいもの。ならば、交感神経の緊張が続きすぎたり、急激な副交感神経反射が起こったりしないように、自律神経のゆれを小さくして、不快症状を軽減するように心がけましょう。
交感神経を過度に緊張させない方法のひとつは、食べることです。ストレスがたまると、むやみにたくさん食べたり、甘いものが食べたくなったりしますが、これも交感神経の緊張をほぐそうとする副交感神経の反応です。注意したいのは食べ方です。食物繊維の豊冨な玄米や、小麦粉ならば全粒粉など、穀物中心の食生活を基本にします。
もうひとつ注目したいのが、辛い、すらぱい、苦いの「イヤイヤ食品」です。どれも、その食品だけ大量にとったら不快になるような味ですが、自律神経の面から見ると、結果として副交感神経を刺激してくれます。まず少量の「イヤイヤ食品」が体に入ると、体はこれを早く体外に排泄してしまおうとして血行をよくします。排泄は副交感神経の反射ですから、交感神経優位に傾いていた体がいち早く副交感神経優位へと変わり、自律神経のバランスが回復するわけです。少量の「イヤイヤ食品」で自律神経のバランスをとり戻せば、自律神経失調による不眠もしだいに軽減していくでしょう。
かぜなどの感染症からがんなどまで、免疫力の低下は多くの病気の原因になりますが、睡眠不足こそ、その免疫力を低下させる大きな要因です。免疫力を維持するためには自律神経を整えることが重要で、それにはしっかり休息をとり、ストレスをためない生活をしなければなりません。体が活動を休止する睡眠中は、副交感神経が最も活発に働いて体をリラックス状態にしている時間ですから、睡眠時間の減少は何より免疫力低下に影響するわけです。
人によって体が必要とする睡眠時間は異なりますから、4時間眠ればすっきり目覚めるという人も7時間は必要という人もいると思いますが、免疫カアップを考えれば、深夜0時から3時の間は眠っていることが望ましいといえます。その時間帯は、人間の生体リズムとして、新陳代謝が活発になり、成長ホルモンが分泌されて、傷ついた細胞の修復作業が行われる時間だからです。新しい免疫細胞を育てて免疫力をつけるためには、せめてこの3時間は眠りについていて、脳と体を休める時間にあててください。
不眠症のがん患者さんに安定剤を処方してみたところ、眠れるようになったら免疫力も活性化した例もありますから、睡眠の力は侮れません。
睡眠障害も低体温が招くさまざまな不調のひとつと考えられますが、現代人の低体温は、体を冷やす生活習慣に起因するものが多いのです。どんな生活習慣かというと第一の問題は冷房です。人間の体は、暑さをしのぐために夏季は産熟しにくい状態になりますから、職場や電車内で過剰な冷房にさらされると体の調節機能がおかしくなり、低体温を起こしてしまうことになります。冷房の効いた場所では、薄いものをはおって体を冷やさないように気をつけましょう。
2番目に問題なのは体を冷やす食生活です。東洋医学・漢方では、ビタミンやミネラルといった栄養学とは別に、食べ物を体を温める性質の「温性」の食べ物と、体を冷やす「涼性」の食べ物に分ける考え方があります。野菜を例にあげると、色の濃い野菜のおひたしは温性ですが、生野菜のサラダは涼性になります。
漢方の考え方から見れば、現代の日本人は、体を冷やす涼性の食品をとりすぎています。また、漢方では、冷たい食べ物は体を冷やし、全身の状態を悪くするので、温かいものをとることが大切と考えられています。飲み物も同様で、真夏でも冷たい飲み物のがぶ飲みは避け、せめて常温のものを飲むように心がけましょう。
昼食後、うとうとした経験がないという人はいないでしょう。人間は、夜のねむけとは別に、午後2時ごろにも眠くなる体内リズムを持っているからです。この体内リズムは、さまざまな事故の原因にもなっています。1988年にアメリカとイスラエルで、交通事故がどの時間帯に起こりやすいかを調べたところ、最も多かったのは夜間ですが、2番目に多かったのは午後2時だったというデータもあります。
人間の脳は、長時間ずっと集中力を維持することはできません。一度、休憩して仮眠をはさむことで仕事や勉強の能率もぐんとアップさせることができます。そのほか、仮眠は(とくに高齢者の)血圧の安定によい、皮膚の細胞分裂を盛んにして皮膚の若さを保つ、不眠症の人が仮眠をとると「なんとしても眠らなければ」というプレッシャーが軽減するなど、不眠症の解消や、高血圧、老化防止などの効果も期待できるという調査結果もあります。
睡眠とは、体の疲れをとるためにあると考えている人も多いと思いますが、それは厳密にはまちがいです。一日中ゴロゴロしていて疲れていないような日でも、夜になると必ず眠くなります。体の疲れと睡眠は直接関係しているわけではないのです。
じつは、睡眠の主な目的は大脳を休ませること。体は座っているだけでも楽になり、疲れをとることができます。ところが、脳はじっくりと時間をかけて眠らないと休息できないのです。起きている間、大脳は常にフル回転しており、オーバーヒートしやすいため、睡眠はとても重要な役割を担っています。ねむけをとるだけでなく、病気を治す、免疫力を高める、ホルモンを分泌するなどの生命維持に欠かせない生理現象は、ちゃんと睡眠をとらなければスムーズにいかないこともわかっています。
人間の体にはさまざまなリズムがあります。体温もそのひとつです。体温は、一般的に朝起きたときは36度と低く、徐々に上昇して夕方4時ごろのいちばん高いときには36度5分くらいまで上がり、また徐々に下降していきます。ところが近年、この体温が低く、36度に満たない人が増えてきています。
この「低体温」は、さまざまな不調の原因になると考えられます。まず、体温が低いと免疫細胞が活発に働かなくなり、免疫力が低下します。その結果、かぜやアレルギー性の疾患など、さまざまな病気を引き起こすだけでなく、がんなどへの抵抗力も弱くなることがわかっています。代謝も悪くなるので、太りやすくなったり、肌や髪などの老化を早めたりすることも考えられます。
なんとか起床しても、頭がぼ1つとしてすっきりしないという人は、簡単にできる5つの脳活性化法を試してみてください。
1は、今日しなければならないことを思い出すことで、脳の神経回路網の働きを活性化します。また、朝、目から得た情報は、脳に強く印象づけられるという利点もありますから、書いたメモを自分で見ることも重要です。
2は、使い慣れない手を意識的に動かすことによって、右脳・左脳がバランスよく刺激され、脳全体の活性化につながります。
3は血行をよくする方法です。脳に新鮮な血液をたっぷり送り込んで、その働きを目覚めさせようというものです。
いまの世の中は、24時間営業の店やテレビの深夜番組などもあり、夜も眠らない社会です。こうした生活様式の変化で、夜型人間が急増しています。世論調査などの結果を見ても、ここ20年あまりの間で、日本人の平均起床時刻は30分近く遅くなっています。夜遅くまで起きているため、年々「遅起き化」が進んでいるわけです。
しかし、人間本来の体の仕組みは数十年程度で変わるものではありません。睡眠と覚醒をつかさどっているのは自律神経です。自律神経には、体を必要に応じて活発に活動させる交感神経と、その逆に休養させる副交感神経があります。通常、夜間は副交感神経の働きが強くなり、体はリラックスして眠くなりますが、明け方近くになると、交感神経の働きが活発になり、体温や血圧が上昇して目覚めに至ります。この生体リズムを無視して夜遅くまで起きていると、夜遅くまで交感神経が休まらず、そのうちに自律神経の切りかえがうまくできなくなってしまいます。
こうした乱れは、不眠症ばかりか、自律神経失調症やうつ病などを罹患しやすくし、内臓の働きも低下させて胃腸障害を起こすなど、さまざまな病気を招きます。夜ふかしは万病のもとなのです。