眠りについてアンケート調査を行ったところ、「すっきり目が覚めない」「熟睡感がない」「疲れが残る」などの理由で、睡眠に満足していないと感じている人が多いことがわかりました。やはり睡眠の満足感は、単に眠った時間の長さによるのではなく、どんな睡眠内容だったかという質の問題が大きいと考えられます。
睡眠の質を改善するのに、人間の体でもっくられているアミノ酸のひとつ「グリシン」という物質が役立つことが、最近の研究で明らかになりました。人間のような、昼間はずっと活動して、夜にまとめて眠るという行動形態は、生き物の中ではとても珍しいタイプです。脳が休んでいるノンレム睡眠と、脳は起きているけれど体は完全に休んでいるレム睡眠のセットを1サイクルとすると、動物はほとんどの場合1サイクルごとに覚醒し、1日に何回も短い睡眠をとります。
寝つきをよくして睡眠の質を高めたいかたに、「蓮の葉のお茶」をおすすめします。日本では、あまり一般的ではありませんが、蓮の産地などではよく飲まれているようですし、ベトナムでは蓮のお茶は「不眠症の特効飲料」として有名です。
蓮の葉には、数種類ものアルカロイド(自然の薬理成分)が豊富に含まれています。これらの相乗効果によって、自律神経の働きが正常化し、緊張の緩和、鎮静効果などがもたらされます。ハノイ薬科大学らの臨床実験でも、蓮のお茶の不眠症改善作用が実証されました。39人の不眠症患者に、蓮のお茶を10日間、飲んでもらったところ、ほとんどの人の不安や興奮が抑制され、不眠症が軽減したのです。目覚めもよく、日中の気分も快調で、副作用も認められませんでした。
すでに睡眠導入剤を飲んでいる人にも、蓮の葉のお茶は有効です。睡眠導入剤は睡眠を誘う薬であって、睡眠の質を高めるものではありません。そのため、眠れるのは眠れるものの、疲れがとれないということもありますが、蓮のお茶は睡眠の質を高めてくれるので、疲れがとれて心身の調子もよくなることが期待できます。
眠りをもたらすホルモンのひとつに「メラトニン」があります。メラトニンが脳の下垂体から分泌されると、睡眠中枢に作用して睡眠のための信号が全身に送られます。それを受けて筋肉は弛緩し、心臓の鼓動はゆるやかになって、人は眠くなるのです。
メラトニンは夜8時くらいに分泌されるようプログラムされています。ところが、ストレスなどのせいで分泌が阻害されると、スムーズに眠りにつくことができなくなります。これが睡眠障害です。ですから、ごく単純にいえば、メラトニンと同様の働きをする物質を摂取することで睡眠障害の改善が期待できると考えられます。
眠りを誘導するホルモンのひとつに「メラトニン」があります。これは最初から体内に存在するものではありません。メラトニンの原料は必須アミノ酸の一種の「トリプトファン」で、食事を通して体にとり入れられます。腸壁から血液中にとり込まれたトリプトファンは、脳に到達すると「セロトニン」という物質になり、これが代謝されて、メラトニンになるのです。睡眠に問題が生じるのは、このトリプトファンのストックが少なく、メラトニンの産生か間に合っていないことが原因のひとつと考えられます。無理なダイエットで栄養が偏り、トリプトファン不足になって睡眠障害を引き起こすこともあるようです。
トリプトファンが含まれている代表的な食品は牛乳と大豆です。これらは体内で消化、吸収され、トリプトファン→セロトニン→メラトニンという過程をへて、ねむけにつながっていきます。質のよい睡眠をとるためには、メラトニンが分泌しやすいよう、心がけて牛乳や大豆を積極的に食べて、日ごろから体質改善をしておくことが必要です。睡眠障害を改善するために、トリプトファンの血中レベルを上げておきましょう。
「寝酒」という言葉もあるように、就寝前にお酒を飲む人も多いようです。しかし、ナイトキャップとして利用するためには、いくつかの鉄則があります。これを守らないと逆効果になってしまうこともあるので、注意が必要です。
まずは量についてですが、ポイントはほろ酔いの一歩手前で止めておくこと。飲みすぎてしまって、せっかく眠りに落ちたのに途中で目が覚めたり、翌朝気分がすぐれなかったりしては台なしです。また、アルコール度数の低いビールは、眠くなるまでにたくさんの量を飲まなければならず、たくさんのビールを飲めば当然、水分を多くとるわけですから、夜中にトイレに起こされる羽目になって逆効果です。
就寝前の1杯のホットミルクが穏やかな催眠剤になることは、よく知られていますが、その効果をもっとアップさせるのが米ぬかとの組み合わせです。
牛乳は、タンパク質や糖質、脂肪、ミネラルなどを豊富に含む飲み物です。そのまま飲んでも手軽に良質な栄養素をとることができますが、相性のよい食品といっしょにとると、その食品の栄養素の吸収を助ける働きも持っています。組み合わせる食品としておすすめしたいのは、ビタミンB群やビタミンE、食物繊維の豊富な「米ぬか」です。米ぬかに豊富なビタミンB1は、欠乏するとかっけになることで知られていますが、そのほかにも脳や神経、心臓や筋肉の働きを正しく保つ作用もあります。このビタミンB1を神経や筋肉にとどめておくために必要な成分が、カルシウムなのです。
「西洋オトギリソウ」は、別名「セントこンヨーンズーワート」といい、古代ローマ時代から精神安定、消炎、鎮痛、抗うつ薬として珍重されてきた薬草です。現代でも、研究の盛んなドイツでは、うつ状態の患者には、まずこの成分が入った薬を処方するほどポピュラーな医薬品です。アメリカでは、1996年に研究が発表されて以降、よく知られるようになり、既存の抗うつ薬にかわるサプリメントとしてブームになったほどです。もちろん、ストレスに囲まれ、不眠症に悩む私たち日本人にも有用な働きがたくさんあり、日本でもアロマテラピーやハーブティー、あるいはサプリメントを利用する人が増えています。
作用としては、まず、原因不明のイライラや不安感を軽減し、心を穏やかにするほか、体内時計をゴッドロールするメラトニンの分泌を刺激し、自律神経を整えます。それによって、睡眠のリズムの乱れや、それに付随するうつ状態の改善を助けます。
不眠に悩む人たちは、床についてから、いろいろなことが頭をよぎり、そのために眠れなくなってしまう人が多いのです。不眠を治すには、それらの気がかりを考えるのをいったんやめ、リラックスすることが先決問題ですから、「西洋オトギリソウ」の精神安定効果が役に立ちます。
サフランといえば、ブイヤベースやパエリアの色づけに欠かせない貴重なスパイスですが、ここ数年、健康に役立つ食材としても関心を集めています。
まず、カロチノイドの一種でサフランの色素成分である「クロシン」に、記憶・学習改善作用があることがわかりました。マウスにサフランエキスを与えたところ、エキスの量が多くなればなるほど海馬(脳の学習、記憶をつかさどる器官)の働きが向上して、神経伝達がよくなることが、東京大学と九州大学の共同研究で明らかになったのです。
ほかにもサフランには、高血圧、動脈硬化、高脂血症などの改善作用があり、睡眠作用に関しても、注目の事実が明らかになっています。ねずみを使った実験で、麻酔薬にサフランエキスを加えたものを与えると、麻酔薬だけの場合よりも長時間、眠っているということがわかったのです。その作用を生かして、不眠症の人を対象にしてサフランが配合された健康食品も続々と発売されています。
そうしたサプリメントを利用するのも手ですが、サフランを自然の形で摂取したいという人には、「サフラン水」をおすすめします。作り方はいたって簡単。サフラン(10本)を水(1Lで)に15分以上つけて飲むだけです。もちろん、サフランを料理の香辛料として摂取しても効果はあるので、ときにはサフラン料理を楽しむのもいいでしょう。
不眠に効く栄養素として知られるビタミンB12は、私たちがふだんの食事で食べている、レバー、卵、カキ、豆類、にんにくなどにも、豊富に含まれています。このビタミンB12は、神経安定作用のある神経伝達物質セロトニンの産生に作用して、不眠の改善などにも必要不可欠な栄養素なのです。
また、ねぎ、玉ねぎ、にら、にんにくなどの香味野菜に豊富な硫化アリルという香り成分は、自律神経に作用することで神経を安定させる作用があります。
これらの成分は、就寝時に効果を発揮してほしいので、夕食としては、中華料理の定番であるギョーザやレバにら炒めなどがおすすめです。ビタミン脱や硫化アリルを効率よく摂取できます。不眠にお悩みの人は積極的に召し上がってみてください。
古くから大豆の健康効果は高く評価されてきました。最近では、不眠や更年期障害にも効果があるからと、大豆の栄養を手軽にまるごととれる豆乳が流行しているようです。
豆乳には、大豆イソフラボンをはじめ、タンパク質やレシチン、鉄、カルシウムなどのミネラル類がバランスよく含まれています。なかでもとくに注目したいのが、大豆イソフラボンです。イソフラボンは、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンと似た構造を持ち、エストロゲンのような働きをする成分です。更年期と呼ばれる40~50代になると、女性は体内のエストロゲンが激減し、ほてりやめまい、不眠、イライラなど、いわゆる更年期症状と呼ばれる不快症状を引き起こします。大豆イソフラボンは、少なくなった女性ホルモンの作用を補って、更年期症状を軽減する働きを持っています。
ただ、体内の女性ホルモンは「多ければよい」というわけではなく、過剰になると乳がんを誘発するといわれています。大豆イソフラボンには、過剰な女性ホルモンを抑える働きもあり、多くても少なくても困る女性ホルモンのバランスを整えてくれるのです。ホルモンバランスを整えるので、月経不順や月経痛の改善にも役立ちます。さらにこの働きは、男性の前立腺肥大や前立腺がんの予防こも作劾だと考えられています。